嚥下調整食と
学会分類について
嚥下調整食とは
咀嚼機能や嚥下機能が一定以上低下すると、健常者と同様の食事を食べるのが困難になります。そのため、口腔内で簡単にすりつぶせるようにする、水分にとろみをつけて飲み込みやすいようにする、などの調整が必要となります。
こうした嚥下機能に配慮された食事を「嚥下調整食」といいます。
摂食嚥下障害において、機能がどの程度低下しているかで食べられる食事が異なるため、それぞれの状態にあわせた調整が必要となります。適切な食形態での食事は、低下した摂食嚥下機能を代償し、誤嚥などのリスク管理につながります。
一方、必要以上に調整をして、噛みごたえがなかったり、味・形態に変化がなかったりすると、食事への意欲が低下し、十分な栄養が摂取できなくなる可能性があります1)。
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1)藤谷順子:食物形態と栄養サポート. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine. 2017; 54(2): 116-120.
嚥下機能障害に準じた5段階の分類
適切な形態を選ぶために参考となるのが、日本摂食嚥下リハビリテーション学会による「嚥下調整食分類2021(以下、学会分類2021)」です。
嚥下調整食について、コード0~4まで、嚥下機能障害に準じた5段階に分類しています。
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コード0
形態は均質。スライス状にすくえる。咀嚼せず嚥下できるよう、付着性・凝集性・かたさ・離水の少なさに配慮する。たんぱく質含有量は少ない。
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コード1
コード0と同様だが、送り込む際に多少意識して口蓋に舌を押しつける必要があるものを含む。たんぱく質含有量は問わない。
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コード2
口腔内の簡単な動きで適切な食塊にまとめられ、送り込む際に多少意識して口蓋に舌を押しつける必要がある。
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コード3
舌で押しつぶせる、簡単にまとまる、離水が少ない、喉を通過する時にばらけない。
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コード4
かたすぎない、ばらけにくい、口腔などに貼りつきにくい、箸やスプーンで切れる程度にはやわらかい。
『日摂食嚥下リハ会誌25(2):135–149, 2021』 または 日本摂食嚥下リハ学会HPホームページ:
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf
表を自社で改変。表の理解にあたっては『嚥下調整食学会分類2021』 を必ずご参照ください。
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食物をのどの奥へ若干送り込める人を対象とし、咀嚼せず嚥下できるように調整されたものを指します。
誤嚥による組織反応や感染を考慮し、たんぱく質含有量が少ないことも望まれるため、栄養補給を目的とせず、重度の症例に対する評価・訓練として用いられます。
ゼリー状を示す0jと、とろみ状を示す0tが設定されています。 -
食物をのどの奥へ若干送り込めたうえで、食塊を口腔内に若干保持できる方が対象となります。
均質でなめらかかつ離水が少ないゼリー・プリン・ムース状の食品で、コード0jよりも物性は広い範囲に及びますが、付着性や凝集性への配慮は必要です。また、送り込む際に多少意識して口蓋に舌を押しつける必要があるものを含む点や、たんぱく質含有量を問わない点が異なります。 -
咀嚼能力は不要ですが、口に入れたものを広げずにのどの奥へ送り込むことがある程度でき、若干の付着性の幅に対応できる方を対象としています。なめらかで均質なものを2-1、やわらかい粒などを含む不均質なものを2-2としています。
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食物を舌と口蓋間で押しつぶして、再びある程度まとめ、のどの奥へ送り込むことができる方を対象としています。やわらか食、ソフト食などともいわれます。
素材や調理方法を工夫すれば、ハンバーグや卵焼きなど、通常の料理を該当させることもできます。 -
食物を歯ぐきで押しつぶせるものの、誤嚥や窒息のリスクのある嚥下機能および咀嚼機能の軽度低下のある人を対象としています。
全粥や軟飯が挙げられ、素材に配慮すれば煮込み料理や卵料理など、通常の料理も該当します。
写真提供:社会福祉法人 聖テレジア会 鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院
学会分類2021では、実際に食事を提供する際はコードの数字の大小を参考に、その時点でのもっとも適切な形態を検討することと、順に段階を上げていくことが基本的な手法として記されています。
ただし、この基本的手法が症例によっては適さない場合があることも示されています。その例として、低いコードの食事では刺激が不十分・不適切で食意欲を起こさないことが挙げられています。また、食事に対するリスク・問題がコードを変えても変化しないのであれば、段階を上げるほうが患者さんのQOLが高くなる可能性があることも学会分類では示しています。
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