とろみ食と
学会分類について
とろみ食とは
とろみ食とは、食材に「とろみ調整食品」を加えて、飲み込みやすいように工夫された食事のことです。
障害によって嚥下反射が遅くなると、気管が閉じられる前に食べ物が喉頭を通過することがあります。もし、食物の細かいかけらや水分が気管に侵入すると、誤嚥性肺炎の発症につながります。そのため、誤嚥を防ぐ手段のひとつとして、飲食物にとろみをつけることが挙げられます。咽頭を通過する速度を低下させ、ひとかたまりにすることで飲み込みやすくします。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会による「嚥下調整食分類2021(以下、学会分類2021)」では、嚥下調整食に加え、とろみにも分類を設けています。分類は「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階で、それぞれについて測定装置がなくても判断できるよう、観察所見および物性測定値を記載しています。
観察所見は性状を日本語で表現。物性測定値は粘度の値を明示し、市販品を説明書と比較しながら活用できるようにしています。あわせて、測定装置を使わずに粘度を確認できる簡易的な測定方法1)として、液体の広がりを計測するラインスプレッドテスト(Line Spread Test:LST)の値と、シリンジ法による残留量も示しています。
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1)佐藤 光絵, 山縣 誉志江, 栢下 淳:とろみ液の簡易評価法としてのシリンジテストの検証. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌. 2021; 25(2): 102-113.
3段階のとろみ
それぞれのとろみについて、「学会分類 2021(とろみ)」の記載内容を紹介します。
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薄いとろみ
「drink」するという表現が適切で、口に入れると口腔内に広がり、飲み込むときに大きな力が必要なく、ストローでも簡単に吸うことができます。液体の種類・味や温度によっては、とろみがついていることがあまり気にならない場合もあります。 -
中間のとろみ
「薄いとろみ」と同様、「drink」するという表現が適切ですが、口の中ですぐには広がらず、舌の上でまとめやすく、ストローで吸うのには抵抗がある状態です。 -
濃いとろみ
ほかの2つと異なり、「eat」するという表現が適切です。まとまりがよく、のどの奥に送り込むのに力を要し、ストローの使用も適していません。
『日摂食嚥下リハ会誌25(2):135-149, 2021』 または 日本摂食嚥下リハ学会HPホームページ:
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf
表を自社で改変。表の理解にあたっては『嚥下調整食学会分類2021』 を必ずご参照ください。
とろみをつけることの注意点
とろみをつけると「液体のさっぱり感がなくなる」「味が変わる」「喉の奥への送り込みに労力を要する」こともあります。そうした理由から摂取量が増えず、脱水症状を引き起こすという懸念もあります2)。
また、正しく作らないととろみが濃くなりすぎたり、とろみ調整食品の種類によっては付着性などが増し、かえって嚥下しにくくなったりします。患者さんによっては、おいしくないと感じ、とろみをつけることを拒否する場合も考えられます。
そのため、提供する食品ととろみ調整食品の相性を確認する、薄めのとろみにできないかを検討する、とろみ調整食品以外を活用するなど、広く誤嚥予防策を検討することも求められます3)。
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2)藤谷 順子:食物形態と栄養サポート. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine. 2017; 54(2): 116-120.
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3)藤谷 順子:嚥下調整食のコンプライアンスとアドヒアランス. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine. 2022; 59(3): 292-298.
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