経腸栄養における
感染管理
監修:
医療法人社団 悦伝会目白第二病院 副院長 水野 英彰 先生
感染による患者への悪影響とは?
流動食は栄養が豊富であるため、細菌にとって増殖しやすい環境といえます。
たとえば、投与チューブやイルリガートルを水洗いのみで繰り返し利用しつつ、成分栄養剤を長時間かけて摂取していたことで、イルリガートル内の成分栄養剤に細菌が増殖したというケースも報告されています1)。
腸管を使わない期間が長くなったり、低栄養状態が続いていたりすると、腸管免疫能の低下、腸管粘膜バリアの破綻などが起こり、腸管内の細菌や毒素が体内に侵入する可能性があります。また、低栄養で体力が低下している方は細菌やウイルスなどの病原体に対する抵抗力が低下しているため、経腸栄養からの細菌感染を引き起こさないよう、清潔な管理が重要になります。
流動食の正しい使用方法
流動食の細菌汚染を防ぐためには、次の点を心がけるとよいでしょう。
バッグ型(RTH:ready-to-hang)を使用
滅菌した上で密封されており、そのまま投与チューブにつないで使用できます。イルリガートルを使う必要がないため、イルリガートル自体が汚染されるリスクを抑えられます。

開封後はすぐに使用
流動食を開封してイルリガートルに移し替えてから、4時間で細菌の増殖が始まり、8時間で臨床上問題となる濃度まで細菌が増殖したという報告があります。そのため、バッグ型以外の流動食は8時間以内、バッグ型は24時間以内に摂取を完了することが望まれます2)。継ぎ足しや水分の追加もイルリガートル内に流動食を長時間残すことになるため避けましょう。

摂取の際の衛生管理
流動食そのものだけでなく、摂取に用いる器具、さらには経腸栄養に携わる医療従事者自身も清潔さを保つ必要があります。
手指衛生の徹底 | 流動食の調整時、移し替え、運搬、接続などの操作時には手指衛生を徹底しましょう。 石けんと流水で30秒以上かけて手を洗い、速乾性擦式消毒剤を15秒以上かけて手指にすり込みます。 |
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清潔な器具を使用 | 摂取に用いる器具は使い捨てを原則とします。 やむを得ず再利用する際は、使用のたびに熱湯や次亜塩素酸ナトリウム溶液で洗浄・消毒します。 投与チューブも、汚染や閉塞を避けるため、流動食摂取後は必ず20~30mlの水を内部に通し(フラッシュ)、十分に洗浄します。 カテーテルチップは、筒先が細く乾きにくいため、食器乾燥機を使うか、次亜塩素酸ナトリウム溶液に1時間以上浸漬します。 |

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1)尾家重治, 神谷晃: 経腸栄養剤の細菌汚染例. CHEMOTHERAPY. 1992; 40(6): 743-746.
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2)日本静脈経腸栄養学会(現:日本栄養治療学会)「静脈経腸栄養ガイドライン 第3版」
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