経腸栄養における
水分補給の考え方

監修:
医療法人社団 悦伝会目白第二病院 副院長 水野 英彰 先生

必要な水分量と水分不足の弊害

体内から排泄される量に加え、体重や体組成、体内水分量、病態を考慮して必要な水分量を検討します

経腸栄養で留意すべき点として、水分量の調整が挙げられます。
経腸栄養の方の多くを占める高齢者は脱水に陥りやすい上、慢性的な脱水によってさまざまな弊害が生じます。
ひとつが血流の減少で、各臓器に悪影響を及ぼします。脳血流の減少により、めまいやふらつき、認知機能障害、行動障害、せん妄などが起きたり、消化管への血流の減少で消化機能が低下し、食欲不振や消化不良、便秘などが起きたりします。ほかにも、尿量の減少による尿路感染や結石、腎不全、皮膚や粘膜の乾燥による細菌感染など、さまざまな臓器・組織で問題が生じます1)
一方で、水分量が過剰になることにも注意が必要です。体内の水分量が過剰に増加すると、血液量が増えるため、心臓に負担がかかってしまいます。
必要な水分量は、尿や便、発汗のほか、皮膚や呼気からの水分喪失(不感蒸泄)などを通じて排泄される量と等しいと考えられ、一般的には体重あたり30~40ml/日と算出されています。

流動食の水分量と水分調節

輸液であれば、投与量がそのまま水分量となりますが、流動食では摂取量に比べて水分量が少なくなります。たとえば、1kcal/mlの濃度であれば水分量は約85%とされています2)。足りない分は追加での水分投与や、流動食摂取前後などのフラッシュ(水や白湯をチューブ内に通す)、薬剤投与時の水分量で補うことになります。

  • 足りない水分量は、追加の水分投与やフラッシュ、薬剤投与時に補います
  • 濃度1kcal/mlの流動食の場合、約85%が水分。

なお、流動食の水分量は濃度と関係しています。
たとえば、2kcal/mlの高濃度タイプの水分量は流動食摂取量の約70%、0.8kcal/mlの低濃度タイプの流動食の水分量は約88%となります。水分不足を避けるために低濃度タイプを選択する、腎疾患や心不全などで摂取できる水分量が制限されている方には高濃度タイプの流動食を選択する、などの使い分けが可能です。

経腸栄養の際の脱水を防ぐためにも、使用している流動食で摂取できる水分量の把握が大切です 日々の患者さんの状態に応じて水分量を調整していきましょう
  • 1)
    谷口英喜: 総論 栄養管理における体液状態の評価. 日本静脈経腸栄養学会雑誌. 2017; 32(3): 1126-1130.
  • 2)
    日本静脈経腸栄養学会(現:日本栄養治療学会)「静脈経腸栄養ガイドライン 第3版」

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