流動食の分類について

監修:
医療法人社団 悦伝会目白第二病院 副院長 水野 英彰 先生

濃厚流動食とは

口から食べられない、もしくは十分な量が食べられない方でも、消化管が機能し、安全に使用できる場合には、腸管から栄養補給を行う経腸栄養が選択されます。
その際に用いられるのが、固形物を除去して流動性をもたせた「濃厚流動食」です。少量で高エネルギーを摂取できるよう調整されています。

  • 経腸栄養では鼻や胃、腸に通したチューブを通じて流動食を摂取します 腸管の機能が十分でない方には、点滴で栄養素を補給する静脈栄養が選択されます
  • 流動食の投与方法。

窒素源による分類

濃厚流動食は窒素源の違いによって分類され、医薬品である成分栄養剤とあわせて3種類から選択されます。

  1. 1
    半消化態流動食

    たんぱく質が主な窒素源で、消化吸収能が保たれている方に選択されます。

  2. 2
    消化態流動食

    ペプチドとアミノ酸が主な窒素源で、消化吸収能が低下している方に選択されます。

  3. 3
    成分栄養剤

    窒素源はアミノ酸のみで、消化吸収能が低下している方に加え、炎症性腸疾患のひとつであるクローン病などへの寛解導入療法として活用されることもあります1)

窒素源によって半消化態流動食、消化態流動食、成分栄養剤に分類される。

濃度や形状による分類

濃厚流動食の使い分けは、濃度(1mlあたりのエネルギー量)に配慮することも大切です。
標準的な濃度は1kcal/mlで、1kcal/mlを超えるものは高濃度タイプ、1kcal/ml未満のものは低濃度タイプと分類されます。
水分制限が必要な場合には水分量が少ない高濃度タイプ、水分を増やしたい場合には水分量が多く、追加水の準備の手間が軽減される低濃度タイプ、といったように、摂取する方の必要水分量を踏まえて流動食を選択していきます。

1kcal/mlが標準的な濃度。1kcal/ml以上を高濃度、1kcal/ml未満を低濃度と分類。

形状は、多くの濃厚流動食では経腸栄養チューブを用いて自然滴下できる液状ですが、近年ではとろみ状、半固形状の流動食も販売されています。
半固形の流動食は手しぼりや専用の加圧バッグを用いて注入しますが、胃・食道における逆流や、誤嚥性肺炎、胃ろう孔周囲炎、下痢、食後高血糖の減少、摂取時間短縮による介護負担の軽減、リハビリテーション時間の確保などが期待できるといわれています1)。半固形状ほどの粘度が必要ない人には、とろみ状流動食を使用する場合もあります。自然滴下可能で、速度調節も不要というメリットがあります。

患者さんの疾患や病態、消化吸収能などを考慮し、適切な流動食を選んでいきましょう
  • 1)
    日本静脈経腸栄養学会(現:日本栄養治療学会)「静脈経腸栄養ガイドライン 第3版」

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