高齢者の低栄養の要因や
問題について
高齢者に多い低栄養とその要因
「低栄養」とは、健康的に生きるために必要な栄養素量・種類が不足している状態のことを指します。たんぱく質やビタミンなど、必須栄養素は複数あり、低栄養の多くはそのうちのひとつではなく、数種類が欠乏している状態です。
高齢者の低栄養状態は、主にたんぱく質とエネルギーが欠乏する「Protein-Energy Malnutrition(PEM)」です1)。PEMを呈する高齢者の割合は、病院外来通院者では約10%、入院高齢患者では約40%、急性期病院の入院高齢患者では約30%、在宅診療を受けている高齢者では35%と報告されており1)、解決すべき課題のひとつだと考えられます。
高齢者の低栄養には、さまざまな要因があります2)。
疾病だけでなく、加齢に伴う味覚などの機能低下、独居などの社会的要因、認知機能障害などの心理的要因などが組み合わさり、高齢者の栄養管理をますます困難にしています。
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1)渡邉健太郎:高齢者の食事管理. 日大医誌 2019; 78 (4): 215-221.
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2)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
低栄養に関連する身体的問題
高齢者の身体機能低下には、栄養面の問題も深くかかわっていることがわかっています。
サルコペニア
サルコペニアは骨格筋量の減少と筋力や身体機能(歩行速度など)が低下している状態を指します。骨格筋量の減少に加え、筋力または身体機能の低下が見られる状態を「サルコペニア」、骨格筋量の減少、筋力や身体機能のすべてが低下している状態を「重症サルコペニア」と定義されています3)。
フレイル
加齢に伴い身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態を指し、要介護状態になる前段階とも捉えられています。
フレイルチェックの5項目では、①体重減少、②筋力低下、③疲労感、④歩行速度(通常歩行速度<1.0m/秒)、⑤身体活動(軽い運動・定期的な運動をしていない)を診断基準としており、3つ以上当てはまった場合はフレイルと診断されます4)。
低栄養をきっかけにした機能低下では、摂取エネルギー量や食欲が低下して低栄養状態が促進され、さらに機能も低下していくフレイルサイクルと呼ばれる悪循環が形成されます2)。この悪循環を断ち切るには、運動療法と栄養療法を並行して行うのが効果的です。
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3)日本サルコペニア・フレイル学会・国立長寿医療研究センター「サルコペニア診療ガイドライン(2017年版)」
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4)2020年改定日本版CHS基準(J-CHS基準)Satake S and Arai H. Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(10): 992-993.
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