リハビリテーション
栄養ってなに?

低栄養患者に対するリハ栄養の必要性

低栄養状態のままリハビリテーション(以下、リハ)を行うと、栄養状態の悪化や体力・筋力の低下を促進させる可能性があります。そのため、リハと栄養療法は同時に行うことが推奨され、それにより栄養状態が改善するだけでなく、ADL(日常生活動作)のさらなる向上が期待できます。
こうしたリハと栄養療法を組み合わせる考え方を「リハビリテーション栄養(以下、リハ栄養)」と呼びます1)

リハビリテーション+栄養療法=リハビリテーション栄養
  • 1)
    若林秀隆:リハビリテーション栄養の重要性 〜どのような運動を行い、どのタイミングで、どのような栄養を加えていくか. 日本フットケア学会雑誌. 2018; 16(4): 171–176.

リハ栄養とは

リハ栄養で重要な点は、人間の健康状態を全人的に評価する分類として策定された「国際生活機能分類(ICF)」で評価を行ったうえで、高齢者の機能、活動、参加を最大限高めることができるような栄養管理を行うことです2)

質の高いリハ栄養の実践には、リハ栄養ケアプロセスが有用です。これは、リハ栄養アセスメント・診断推論、リハ栄養診断、リハ栄養ゴール設定、リハ栄養介入、リハ栄養モニタリングの5段階で構成されています。
高齢者の健康管理は画一的な方法では解決しないため、個別化されたゴールに向かう介入が、リハ栄養ケアプロセスでは重視されます3)

  • リハ栄養アセスメント・診断推論、リハ栄養診断、リハ栄養ゴール設定、リハ栄養介入、リハ栄養モニタリングで構成されるリハ栄養ケアプロセス。
  • リハ栄養の質を向上させるには、プロセスが大切なんですね。
  • リハ栄養アセスメント・診断推論

    ICFによる全人的評価、栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の評価・推論を行います。
    ICFでは対象者の持つ困難さや障害を心身機能・身体構造、活動、社会参加の3項目から、なにができてなにができないのか、なにに問題があるのかを区分します。
  • リハ栄養診断

    リハ栄養診断のステップでは、栄養障害、サルコペニア、栄養素摂取の過不足を診断します1)。栄養素摂取の過不足の有無と原因を評価し、リハと栄養管理の適切なゴール設定に役立てます。
  • リハ栄養ゴール設定

    予後を予測し、リハや栄養管理のSMART(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:重要・切実、Time-bound:期間を明記)なゴール設定を行います。
    ゴールは、1か月後に体重を1㎏増加させる、1か月後に杖を使用して屋内平地歩行自立を達成する、といったように具体的かつ評価可能であることが理想です。
  • リハ栄養介入

    個別に設定したゴールを達成するため、「リハからみた栄養管理」と「栄養からみたリハ」を検討し、介入を行います。たとえば、1日3時間リハを実施する場合は、栄養管理としてリハで消費する500kcalを追加、1か月後に体重を1kg増加することを目標とした場合は、1日200kcalを追加するといったように、栄養療法とリハの両立ができるような具体的な数値を設定し実施します1)。また、医師、管理栄養士、リハ専門職などの多職種で協働し、介入することも望まれます1)
  • リハ栄養モニタリング

    介入後の経過を観察して再評価を行います。とくにリハ栄養ゴールの達成状況、栄養状態、ICF、QOLの評価が重要です。リハ栄養ゴールを達成できなかった場合は、原因を考え、新たな目標を再構築する必要があります1)
    • 2)
      若林秀隆:リハビリテーションと栄養管理 (総論). 静脈経腸栄養. 2011; 26(6): 1339-1344.
    • 3)
      前田圭介:フレイル・サルコペニアに対応するリハビリテーション栄養. 日老医誌. 2021; 58: 556-560.
明確なゴールを設定し栄養療法を行うことで、リハの効果は向上します。栄養状態の改善が生活そのものの改善につながるということを意識し、栄養指導をしていくことが大切です。

医療・介護従事者の方向けに、リハビリテーション栄養ポケットガイドをご用意しています。

医療・介護従事者向け情報では、リハ栄養ケアプロセス研究発表ツールをダウンロードいただけます。
解説マンガなども掲載されていますのでぜひご覧ください。